| ブルボン全弟であるカツミエコー99は、まだ入厩前であるため、名前はまだ決まってないのだが、 はじめの冠は「ローレル」であることは決まってます。(おそらくね。)なので、名前が決まるまでは便宜上、 カツミエコー99を「ローレル」と呼ぶことにします。その方が後に修正もしやすいし。 なお、ここは自身の見聞を元にした「創作」ということをご理解のほどを。また、作者の気まぐれでちょっと細かい 表現などで文章を変えることも、まれにあるかも知れません。 (フォント「小」のサイズの方が読みやすく、お薦めします。) |
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第0章 新たなる息吹 1999年5月24日 北海道の日高の南、比較的海に近い場所に位置する門別町。この付近は北海道の中では比較的穏やかな気候で、馬が過ごしやすい環境であるため、牧場が数多くちらばっているところである。ここから数多くのサラブレッドが生まれ、育っていった。そして、今日もまた、その中の1つである原口牧場の中でも新しい息吹が今まさに芽生えようとしていた。 一人の男が腕時計に目をやり、現在の時刻を確認していた。そして「もうすぐだな…。」とテーブルの上にあったコーヒーをすすり上げながら、気持ちを引き締めて【そのとき】を今か今かと待っていた。そのとき、男性の耳が後ろにあるドアの開く音を認識した、瞬間、聞き慣れた声も一緒に耳に入ってきた。 「あなた!!、そろそろ生まれますわよ!」 この男性こそ、ミホノブルボンという偉大なG1馬を生み出した原口牧場の主人であり、そして、声の主はその奥さんであった。 主:「うむ、お産の準備は出来ているか?」 奥:「はい。あなたも早速支度して。みんなもう集まっていますわ。」 主:「ああ、すぐ行く」 主人は部屋の片隅にある、エッジ色の作業着を取って袖を通しながらカツミエコーの出産現場へ大急ぎで向かっていった。その後を奥さんも一緒に追いかけていく。出産現場は、カツミエコーの出産のお手伝いをする人や見守る人などで何人かがすでにいて、早速主人や奥さんもその輪に加わり、そうしてみんなで、カツミエコーに励ましの声をかけつつ新しい命の誕生をじっと待っていた。 主:「おっ、足が出てきたぞ。」 奥:「もうすぐだよ、もうすぐだよ、カツミエコー、頑張って!!」 皆:「ああ、またこんな現場が見れるなんて…。思えば10年前のあの春も…」 主:「しっ!…」 奥:「…」 主:「おお、いよいよ生まれたぞ!皆、新しい命の誕生だ!!」 奥:「これでブルボン全弟は3頭目だわ…。ああ、どうやら、子供は無事なようだわ。」 主:「ブルボンが生まれたのは89年、そして今回の誕生でちょうど10年か。 うむ、これも何らかの巡り合わせかもしれんな。」 奥:「それにしても長かったわねえ…。この母ってなかなか子供がとれなくて本当に 大変だったわねえ。今年こそ今年こそ、とそうして何年も待ち続けたことか…。」 主:「待って、待って、大切に育てた甲斐があったな。」 奥:「そうね、まさに今までの苦労が実った瞬間だわ…。あら?あなた、見て!この仔、鹿毛だわ。」 主:「どれどれ、おや本当だ。どうやら、この仔、毛色は父親似だな。ハッハッハ。」 奥:「カツミエコー、よく頑張ったね。今夜はぐっすり体を休めていらっしゃい。」 主:「さあ、皆の衆、今夜は出産祝いにワインにすきやきだ!」 皆:「イエーイ!」 その夜、原口牧場の家の明かりが一夜中消えることはなかった。 第1章 ローレル誕生 それから数日後の真昼間。 主:「そろそろ、この仔にも名前を付けてやらんとのう。」 奥:「そんな、どういう馬が分からないだろうし、まだ早急に決めなくてもいいんじゃないの?」 主:「なら、キミはこの仔をどう呼んであげるというのだ?」 奥:「今までの慣習で『カツミエコー99』で呼ぶつもりだったんだけど…。」 主人は、5秒ばかり次の言葉に備えて心を落ちつかせるために、一息吐いて間を空けた。そして… 主:「いいかい?この仔は10年の時をえて、ミホノブルボンの生まれ変わりになろうとしている馬だよ。 その馬を他の馬と同様に『カツミエコー99』なんて簡単に配列的な言葉で片づけていいかね?」 奥:「いや、それは入厩までの一時的なもので…。」 主:「こういうのはね、早く決めた方がいいんだよ。それに、早く決めた方がいいのは他に理由もある。」 奥:「どんなのですの?」 主:「あの栗毛の流星が去って8年経とうとしているけど、未だに根強いファンはまだ日本中にたくさん 残っている。そういうファンは、この仔の誕生を一緒に喜んでくれるはずだ。そして、喜びのあまり ホームページ上か何かでこの仔のストーリーを書いてみようという物好きな奴もきっと出てくるだろう。 その時、『カツミエコー99』のままじゃ、ストーリーに何となく締まりがないのではないか。」 奥:「そんな物好きな奴未だにいるのかしらねえ。まあ、いいわ。あなたがそうおっしゃるのなら。」 主:「じゃあ、決まりだな。その前にキミならこの仔に名前をどう付ける?」 奥:「あんまり深く考えたことなかったけど…、んとね、『ブルボンブラザー』なんてどうかしら?」 主:「うーん、その名はこの仔の独立性が奪われてしまう。それよりぴったりな名前、実は考えてあるんだ。」 奥:「あら?どんな名かしら?」 主:「『ローレル』だ。ローレルとは、『名誉・勲章』という意味を持つ。どう、いい名だろう。」 奥:「結構素敵な名前だわね。それじゃ、この仔をローレルと呼ぶことにしましょ」 と奥さんは脇で全身中を一生懸命動かそうとしている子馬に近寄り、体を縮めてその子馬の頭を丁寧になでながら「あなたの名前はこれから『ローレル』よ。」と何度も優しい声で語りかけた。そのとき子馬の瞼がスローモーションでゆっくりと開かれはじめた。 主:「おお、見ろ、この仔の目、タレ目だぞ。いい青年の典型的な目だ。」 奥:「あら。本当にタレ目になっているわね。かわいいわ。」 ローレルは頭をなでてもらい、優しい言葉で繰り返し名前を呼ばれることに心地よい気分を覚えながらも頭の中ではぼんやりとこう感じていた。 ロ:【しっぽがなくって、2本足で歩ける馬もいるんだなあ〜。おいらも大きくなったらああなるのかな〜。】 第2章 母の教え 原口牧場の中、ローレルはカツミエコー母さんと他の馬も交えながら一緒に戯れていた。人間の世界でいう、遊技場のような雰囲気である。生後数ヶ月になって、ローレルも、ちょうど物事に対する知的好奇心旺盛な時期に差しかかってきた。 カ:「ローレル、草はね、緑たっぷりの方が一番おいしいわよ。ほら、ここの草を食べてごらん。」 ロ:「モグモグ…、うん、とってもおいしい〜。」 カ:「反対にね、枯れている草は食べてもあんまりおいしくないわね。ほら、ここ。」 ロ:「モグモグ…、ブヒヒヒーン!まずいぃぃ〜。」 カ:「このちょろちょろ流れるのは小川といってね…。他のところではあんまり見かけないわよ。」 ロ:「みず〜。のめる〜。気持ちいい〜。」 カ:「飲むだけでなく、こういう遊び方もできるわよ。えぃっ。ぱしゃ!」 ロ:「ヒンヒンヒヒーン〜。ママー、冷たいよ〜。」 こうして、カツミエコー母さんは息子ローレルに対して、いわゆる『じゃれ合い』を通して様々な事を教えていった。そして後に、ローレルに子供向けの様々な絵本も読ませるようにした。ローレルはどうやら本を読むのが大好きなようである。特に猿と犬とキジを連れて鬼が島へ赴き、鬼どもを後ろ足蹴りでバッタバッタとなぎ倒し最後にたくさんの人参をもらえる『モモウマタロウ』が特にお気に入りなようであった。そんなある日、 ロ:「ねー、ママ、本をよんだけど『ママ』の他に『パパ』っているよね〜。」 カツミエコーはそれを聞いた瞬間、16年生きて来た長年のカンからいやな予感がするのを感じた。続いて、 ロ:「『パパ』、どこにいるの〜?」 カツミエコーは、しばらく黙ったまま前左足で、2〜3回ほど「カッカッ」と地面を軽くえぐる動作をした。そして、 カ:「……ローレル、パパに会いたいの?」 ロ:「うん、会いたい〜。」 カ:「そう…、実はパパは今ね…、」 カツミエコーこういいかけて、後足悪そうに顔をちょっと脇に背けながらきごちなさそうな声でこう答えた。 カ:「パパはいつも仕事で忙しくてね、世界中のいろんな国へ飛び回っているお馬なの。」 ロ:「へえ、どんなしごとしているの〜」 カ:「そうね…、『馬の遺産』っていう難しい調べごとをしている仕事なのよ。」 一般的に、『パパ』と呼ばれる馬というのは春になると何頭ものメス馬と交尾をしまくり、夏〜冬にかけてはたいてい牧場で草を食べながらごろごろしている生き物を指しており、ローレルのパパ、マグニチュードもその中の1頭である。こういうことはサラブレッドの世界においては常識的なことであり、知られたからといって別に恥ずべき事ではない。実際、サラブレッドでの常識でいう『いいパパ』というのはたくさんのメス馬に種付けができて、優秀な子供を残せる馬を指すのだ。カツミエコーもそういう事実は分かっていたのだが、カツミエコーはどうやら人間の世界の常識も持ち合わせていたようだ。そして、事実を述べるよりも人間の常識では『いいパパ』といわれる架空の『パパ』の話を持ち出した方が、ローレルの教育にもいいだろうし、メス馬の気持ちからも、ああいう馬になって欲しいという希望も相まってとっさにあんなウソを言ったのだ。ローレルはそうした母親の思惑など知る由もなく、 ロ:「ほ〜、よく分からないけどおいらのパパってすごい仕事をしているんだなあ〜。」 としきりに感心しきりであった。 (第3章に続く) |
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